阪急梅田駅に隣接するJRの高架下は路地のようになっており、食いもの屋や呑み屋が多数営業している。「新梅田食道街」と呼ばれるエリアだ。「食堂」ではなく「食道」と名乗っているのが面白い。
JR大阪駅から勤務先へ向かう際、ほぼ毎日この路地のどこかを通っている。
100くらいはあるだろう店の中で、全国チェーン店はマクドナルドくらいだろう。その他は、地面に勝手に根を張ってしぶとく営んでいるように見える個人経営規模の店が並んでいる。元々は、旧国鉄時代の施設関係者に対する救済事業として設立されたとWebサイトに記されている。歩いていると、かつて栄えていた地方の商店街や小売市場の中を通っているような雰囲気と似ていて愉しくなる。暮らしの時間配分の問題で、ここで帰りに「ちょっと一杯」する機会がほとんどないので、全ての店を「味わう」ことが出来ずにいるが、「ちょっと何か食べとくか」というタイミングで、いくつかの店をよく利用する。
その中の一軒が、立ち食いソバ屋の「潮屋」である。
店の「推し」は、大きなお揚げさんが乗った「きつね」や「たぬき」。値段もコロナ禍で値上げされたものの、1杯380円(2023年9月時点)と梅田ど真ん中の食べ物としては、かなりお手頃ではないか。
しかし、潮屋ならではのメニューは「コロッケそば」だと断言する。
潮屋の「コロッケそば」は、厳密に言うと「カレーコロッケそば」である。
茹でたソバに出汁を入れたあと、トレイの上に揚げ置かれてあるコロッケと刻みネギを乗せて出来上がりのブツだ。
コロッケに箸を入れてみると、カレー味がついた潰しポテトとは別に角切りにされたジャガイモと人参が混ざっている。
コロッケをかじりながらソバをすするのも良いが、コロッケの中身を出汁に溶かして「疑似カレーそば」への味変を愉しむのも良い。
味変が進むにつれ、角切りされたジャガイモと人参が「具」としての存在を主張する。溶かす割合を増やせば増やすほど、食べ終わる頃には「さらさらスープカレーやんコレ」状態の出汁をすすっていることになっている。
コロッケの固形感を愉しむか、コロッケを溶かしてカレー感を味わうか?
食べ始めから、どっちらへんで味わおうかと、その時の自分の気分と半ば強制的に向き合うことになる潮屋のコロッケそば。
ひっくり返るほど美味いものでもないのだけど、時おり胃袋が欲する銘品だ。
2023年9月時点で、一杯400円なり。